e-bike元年到来
今年になってから自転車関連のマスコミ記事や展示会等で「e-bike」の名前を聞く事が増えてきました。市場では日本メーカーはもとより、海外スポーツ自転車メーカーの商品が続々登場しています。
日本では従来から「電動アシスト自転車」は普及しておりますが、新たに登場したこの「e-bike」とは何が違うのでしょうか。
電動アシスト自転車は日本発祥
そもそも従来からの「電動アシスト自転車」も「e-bike」も、電動アシスト自転車というカテゴリーに属する物である事に違いはありません。人間がペダルを踏む力を電動でアシストしてくれる機能であって、ペダルを漕がなくても自走してくれるような物ではありません。
日本での歴史は意外と古く、1993年にヤマハが発売した「PAS」が、実は世界初の電動自転車なのです。
快速車文化、すなわち「ママチャリ」文化が根強い日本では当然のようにママチャリの一つのジャンルとして普及しました。重い荷物や子供を乗せたお母さん達が、自転車でスイスイと坂道を登っていく光景は、今では日本中で見られます。
一方で、海外で自転車というと「スポーツサイクル」であり、ママチャリの方が珍しい物です。海外の買い物は基本的に自動車利用ですからね。またツール・ド・フランスに代表されるようにスポーツサイクルは伝統文化・国民的スポーツとして絶大な地位を築いています。
そのため日本の「ママチャリをアシストする電動」に対し、欧米では「スポーツサイクルをアシストする電動」が発展しました。これがいわゆる「e-bike」なのです。
欧州で本格的にe-bikeの販売が始まったのは2010年頃、それが2017年には年間200万台が販売されるヒット商品となっているのです。
ドイツでの大ヒットの経緯
欧州、それも特にドイツではe-bikeの人気が高く、2017年のドイツでの販売台数は71万台になるそうです。1台の平均販売価格が2387ユーロ(約42万円)と言う事を考えると、これはなかなかの人気と言えます。
何故ドイツではこんなに人気が出たのでしょうか。
こんなデータがあります。ドイツにおける2014年のe-bikeユーザーの平均年齢は65歳、それに対して2017年のユーザーの平均年齢は45歳に若返っているというのです。
上述の通り、欧州ではスポーツサイクルは一つの文化として確立しており、古くからロードレーサー等に乗っている人達が居ます。
ベテランの方々は歳をとるにつれ体力が衰え、若い頃のようにロングライドやヒルクライムといったハードな乗り方が出来なくなってしまいます。このような方々がまずe-bikeに目を付けました。電気のアシストがあれば、昔のようにスポーツ走行が出来るのです。
次に普及したのが女性だそうです。普通にロードレーサーを楽しんでいる男性が、奥様や彼女に買ってあげて一緒に遠出したり山へ行ったりするようになりました。この場合、男性の方は普通のロードレーサーで走り、従来なら男性について来れなかった女性達が電気のアシストによって一緒に走れるようになった、というわけです。
しかしここで逆転現象が起こります。アシストでスイスイと山を登ってしまうため、逆に普通のロードレーサーに乗った男性の方が坂道で置いて行かれてしまうのです。
これはマズい、いや凄い。というわけで、今度は男性の方もe-bikeを購入します。
ドイツではこうして若い世代にも普及が進んでいったのだそうです。
アシストしててスポーツになるの?
ここでちょっと疑問になってくるのは運動効果です。
自分の力でペダルを回すからこそ、運動になってダイエット効果も高いはず。それをアシストしてしまったらダイエット効果は半減してしまうのでは無いか?、と思いますよね。
ところが、いわゆる「ダイエット効果」としては、e-bikeの方が優れている部分があるのです。
電動アシストは、ペダルを踏む力と回転数を検出して、負荷が高いときほど強くアシストしてくれます。具体的には発進時の加速や登り坂です。この登りや加速時に必要なのは強い踏み込みの脚力ですが、アシストはこの一番きつい部分を取り去ってくれます。
すると、軽い状態のペダルをクルクル回すという動作だけが残ります。軽い一定負荷の運動が長時間続くわけです。スポーツトレーニングに詳しい方はすぐにピンとくると思いますが、要するに「有酸素運動」の部分だけが残るわけです。
もちろん競技レベルとしては物足りないトレーニングレベルですが、一般的な健康増進のための心肺機能強化や減量目的の運動としては、これはまさに最適と言えるのでは無いでしょうか。
機能やメーカーについての覚え書き
一般的なe-bikeの充電は100Vの家庭用電源で行えます。フル充電時間は約3.5時間、走行可能距離は100km~130kmとの事。大抵の日帰りツーリングならまかなえそうな内容です。
日本の道路交通法により、アシスト機能は時速24km以上では行われません。それ以上のスピードで走るときは自分の脚力だけで走らなければなりません。ただe-bikeはスポーツ車ベースで車重も軽いため、それほど不利な要件にはならないと思います(ロードレーサーのように時速30km以上で巡行しようと思ったら、乗り手が頑張って走るしかありませんが)
以下、主だったメーカーとその特徴です
- ヤマハ 電動アシストの老舗、バイクの販売網で全国展開
- パナソニック バッテリ-・動力ユニット・車体を自社生産でき、国内展開に有利
- シマノ 自転車パーツメーカーの老舗、シェア・知名度とも抜群
- ボッシュ 老舗の自動車部品・電動工具メーカー、欧州では絶大なシェア
- ファズーア ドイツのドライブユニットベンチャー企業
- バーファン 中国メーカーで欧州で大きなシェア、開発スピードが早く安価
他にもTREKやジャイアントといった大手スポーツサイクルメーカーが続々と商品を投入してきています。
私はホビーレースも出るので当面は電動アシストに頼る気は無いのですが、ファンライド用途では、これから日本でも一大勢力になってくるかもしれませんね。
まあ1台30~40万円する価格が一番のネックになって来そうな気はしますが・・・