スタートレック: SNW・S1第10話「情けの価値」あらすじや感想など
シーズン1 第10話「情けの価値」”A Quality of Mercy”のあらすじ
エンタープライズはU.S.S.カユーガと共に、ロミュランとの中立地帯近くにある宇宙基地を訪れていた。
だがパイク船長は基地司令の息子がマアト・アル=サラーフという名前だと聞いて顔色を変える。その子はパイク船長が将来遭遇する「運命の事故」において、命を落とすことになる士官の一人だったのだ。
パイク船長はマアトに警告をしようと決意し手紙を書き始めるが、そこに未来から来た自分自身が現れる。未来のパイク”提督”は、過去の自分が歴史を変えるのを阻止するためにやって来たのだ。
提督はタイムクリスタルを使って、もしも未来を変えた場合何が起きるのかを、過去のパイク船長自身に体験させようとする。
パイク船長が恐る恐るクリスタルに触れた次の瞬間、彼はエンタープライズの格納庫でクルーの結婚式を執り行っていた。時は7年後の2266年、パイク船長が悲惨な事故に合う予定の時から半年後の世界……
そこに宇宙基地からの救難信号が入った。中立地帯近くの宇宙基地が何者かの攻撃を受けたというのだ。
エンタープライズが急ぎ駆けつけるが、宇宙基地は遮蔽を解いて出現したロミュラン・ウォーバードによって破壊されてしまう。
パイク船長は近隣にいたU.S.S.ファラガットの「カーク船長」に応援を頼み、共にウォーバードを追跡するのだが……
情報を整理してみる
- TOSシーズン1第14話「宇宙基地SOS」の事件を、カーク船長ではなくパイク船長が対応していたらというIFストーリーです
- 地球とロミュランの間では、惑星連邦設立前の2156年~2160年の間に大規模な戦争が起こっています(連邦設立は2161年)※年表参照
本当はこの戦争がENTシーズン5以降で描かれるはずだったのですが、番組が打ち切られてしまったため実現しませんでした - ロミュラン人の姿はこれまで連邦側の人間は誰も見たことがないという設定です。大規模な戦争の末に条約を結んだ割には不自然ですが、そういう設定なので仕方ありません
- ロミュラン人とバルカン人は同じ先祖から別れた種族です。それを再び統一に導こうというのがTNG以降のスポックの使命になっていきます。そしてその結果についてはディスカバリーシーズン3にて描かれます(長く続くシリーズならではの楽しみですね)
- バテル船長の船はU.S.S.カユーガ、エンタープライズと同じコンスティテューション級NCC-1557
- 未来のパイク”提督”が着ていた制服はTOSの劇場版(カーンの逆襲以降)でカーク達が着ていた懐かしい物ですね(2280年代頃の制服です)
- 未来のパイクはクリンゴンからタイムクリスタルを借りて、過去の自分に警告にやって来ました
- 結婚式を挙げていたクルーの名前は出ませんでしたが、アンジェラ・マーティーニーとラバー・トムソンです。本来の歴史でも急に目立ったクルーは死ぬパターンでして、TOSでは旦那さんが、こっちの世界線では奥さんが亡くなります(ひでえ)
- 未来のエンタープライズはウフーラ中尉が通信士官を務めていましたが、操舵手はミスターカトーではなく、ドクターマッコイも配属されていないようです。ただチャーリー(スコット)は居るみたいですね(声だけ登場)チェコフはまだ登場時期ではありません
- ウーナ副長はサリウス6号星の犯罪者コロニーに収監されているとのこと
- 本来の歴史ではパイク船長の事故はパイクがエンタープライズ船長をカークと交代した後に起きることなので、事故が起きなかったから船長を続けているというのでは矛盾しているのですが、クルーが違う件も含めて歴史改編の影響なのでしょう
- 宇宙基地の司令官はTOSでも今回もかわいそう……
- この時代の遮蔽装置だと遮蔽しながらの攻撃は出来ません。連邦も遮蔽船との戦闘はクリンゴン戦争で経験済み(ディスカバリーシーズン1にて)なのである程度のノウハウはあるはずなんですが、その辺の設定はあまり拾われておらず、あくまでTOSのエピソードに沿った内容に落とし込まれていました
- この時代のU.S.S.ファラガットはNCC-1647です ※「ジェネレーションズ」でエンタープライズの救援に来たファラガットはNCC-60597(こちらは後にクリンゴンとの戦いで撃沈)
- カークのお兄さんサムはまだエンタープライズに居ましたが、本来の歴史だとジムがエンタープライズ船長になった時点で艦隊を辞めています
- パイク船長が無事な歴史の流れになると、代わりにスポックが重傷を負う運命になっているようです(この手の時間物SFではよくあるパターンです。今時のSFファンならシュタゲ等を思い浮かべることでしょう)
- この世界線でもカークのお父さんはU.S.S.ケルヴィンに乗っていたようです
- 元の時間に戻ったパイク船長は、手紙を送って歴史を変えようという試みを止めました
- 突如バテル船長によってウーナ副長は囚われてしまいました。イリリア人だということを隠していたのが艦隊にバレたようです(この件はシーズン2に続く)
- 今回の宇宙歴は1457.9(ロミュランとの遭遇戦はTOS「宇宙基地SOS」だと1701.8、今回のエピソードでは1709.2に設定されています)
今回の感想
こっちのカーク船長は、なんというかオリジナルやケルヴィンタイムラインに比べてギラギラしたオーラが足りない感じだなぁ。眉毛が良くない眉毛が(苦笑)
でも無人船をかき集めてハッタリを効かせるしたたかさは、ああ確かにこれはカーク船長ですね。ハッタリと口八丁手八丁はカークの十八番ですから。
今回は歴史改変ストーリーに旧作エピソードをガッツリ噛ませるという、シーズンラストにふさわしい見応えのあるストーリーでした!
旧作からのファンならすぐに気付きますがTOSシーズン1「宇宙基地SOS」のエピソードまんまです! 気付いた瞬間「おおっ!」と声を上げてしまいましたよ。
歴史改編物やIFストーリーはやはりSFの醍醐味ですね。本来の歴史だとどうなるかを知っていた方がより楽しめますので、未見の方は先に「宇宙基地SOS」を見ておくのがオススメです。
そして単なる過去エピソードの焼き直しかと思わせつつ、ちゃんとこの事件を描くことに対する説得力と仕掛けがしてあるのが素晴らしい。
要するにパイク船長がエンタープライズに残ったままだと、たとえ今回の事件を上手く解決できていたとしても、これからカーク船長が出くわすであろう連邦の存亡に関わる危機的事件をことごとくパイク船長が対応しなきゃならなくなるんですよね~、こりゃ大変だぁ(苦笑)
しかも歴史の揺れ動きによって頼みのスポックは退場してしまうという超ハードルートに突入ですよ。いやもう絶対無理ゲーです。連邦滅びます!
また、本来の歴史ではカークはあえて攻撃して力を見せることで戦争を防ぎましたが、パイク船長は理性的に対話で解決しようと試みます。しかしその行動が弱腰と捉えられ、ロミュランとの全面戦争に突入してしまいました(つまり会議のシーンでのカークの提案が正解だったということですね)
パイク船長の態度は立派ですし頼りがいもありますが、異文化との対話ではそれは決して最善ではないというスタトレにおいては普遍的なテーマを明示しつつ、そこにパイクとカークのキャラクター性の違いを浮かび上がらせるという構図も実にニクいです。
こういった要素をこの1話の中でまんべんなく描ききったのが実に上手い脚本だったと思います。傑作エピソードでしたね。
まあ最後の副長逮捕劇だけは取って付けたようなクリフハンガーでアレでしたが(苦笑)
※ところでシーズン2の配信が始まったので界隈の話題はそっちに移ってますが、今なかなか時間が取れず一気に見て世間の流れに追いつくというのも困難なため私はこのまま週一ペースで続けます。ちょっと周回遅れ感が否めませんがご容赦を(ああっでもローワーデッキ回までにはなんとか追いつきたいなぁ)
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