「ハンドルを押すダンシング」を理解する力学的ヒント
※こちらの記事は2019年時点の情報が元になっており、それ以降の新商品などの情報は含んでおりません
ベクトルで考えると簡単です
ドロップハンドルのロードレーサーに比べて、フラットバーだとダンシングがやりにくい。以前そんな意見を聞いた事があります。
やりにくいと感じる理由の半分くらいは慣れの問題が大きいんじゃないかとは思いますが、勿論それだけではありません。
ドロップハンドルとフラットハンドルではハンドルの握り方が違いますし、関節の向きも使う筋肉も微妙に変わります。それにフラットハンドルを普通に握ると肘が外に出て脇が開いてしまいますので、ハンドルを引くという動作にはマイナスでもあるのです。
さて、ダンシングをする場合、踏み込む力を大きくするためにハンドルを引く、という動きをするのが一般的かと思います。
このとき乗り手が自転車に加えている力をベクトルで表現するとこんな感じかと思います。
ハンドルを引く事で踏み込みと反対の力を車体に与えて、上半身の力もペダルに伝えているわけです。ここまでは自転車乗る人ならみんな実感で分かっている事ではないかと思います。
一方で、ペダルとハンドルの位置は自転車の中心から外側に離れているわけですから、伝えている力は車体の軸を中心としたモーメントと見る事も出来ます。
なんだか難しい表現になってしまいましたが、同じように矢印で書くとこんな感じです。
自転車を左右に振ってダンシングする時のイメージを考えると分かりやすいのではないでしょうか。この矢印の向きを左右交互に切り替えながら、全身の力を使って振っているわけです。
で、ここからが本題なのですが
上の図のようにモーメントで考える場合、ハンドルは引くだけじゃなく、支点の反対側に押す方向の力を加える事でも成立すると分かります。
つまり上の図を書き換えると、こうなります。
最近自転車雑誌などでも「押すダンシング」を薦めている記事をよく見かけます。
BiCYCLE CLUB (バイシクルクラブ)2018年12月号でも筧五郎さんが「ハンドルを押す」乗り方をご説明していらっしゃいますので、私の稚拙な説明よりも、そちらを御一読いただいた方が良いかもしれませんね。
で、これが何故フラットバーに関係するかというと、先に書きましたとおりフラットバーだと脇が開いてハンドルを引きにくくなってしまうため、押す方が力を入れやすいのです。
また前回書きましたとおり、エルゴグリップを使っていると手のひら全体を使ってハンドルに体重を乗せられるため、この点でも押す方が力を加えやすくなります。
またフラットバーはドロップハンドルに比べてハンドル幅が広いので、少ない力で大きなモーメントをかけられるという利点もあります。
ただ練習して慣れておかないと、最初は上手く出来ないかもしれません。勘のいい人はすぐ出来るんでしょうが、私はなかなか上手く出来なくて、通勤で日々乗っている中で繰り返し練習して出来るようになりました。頭で考えながら試してみても手足がバラバラに動いてしまって、かえって混乱してしまった記憶がありますね。
いまはシッティング時でもハンドルを押すことを意識できるようになりました。
さてここからは全くの余談なのですが、
ハンドルを押すダンシングを徹底的に突き詰めて、おもいっきり体重をかけながら大袈裟なくらい大きく自転車を左右に振ると、多分こうなります ↓
(画像引用元:GOOD SMILE COMPANY商品ページ:https://www.goodsmile.info/ja/product/4838/figma+巻島裕介.html)
たまにyoutubeとかでスパイダークライムを再現しようとしているムービーがありますが、ヒョコヒョコと左右に車体を振るだけでは全然意味がありません。
おそらくかなり重いギアで思い切りハンドルにも体重をかけて強力なモーメントを車体に加え、全身の全力をペダルに伝えるのがスパイダークライムの本質だと思います。
たぶん作者の人そこまで考えてないとは思いますが(苦笑)