【映画】機械獣襲来!「前田建設ファンタジー営業部」を見てきた【感想】
すばらしきバカ映画(褒め言葉)
割と良い評判を聞いて気になったので、映画「前田建設ファンタジー営業部」を見てきました。
もともと前田建設ファンタジー営業部というのは、空想世界の建造物を現在の技術で施工したらどうなるか? というシミュレーションをweb上でやっている前田建設さんのお遊び企画です。お遊びとは言っても本当に大真面目にやっておられ、結構人気のあるコンテンツになっています(公式ホームページはこちら)
今回の映画は2003年にその企画の第一弾として行われた「マジンガーZの格納庫建造」についての積算活動が元ネタになっています。
この内容を一体どうやって映画にするんだろうと思っていたら、思いっきりバカ映画の方向に振り切って作っていて大笑いさせられました。いやこれはすばらしい。
もちろんバカ映画と思わせつつも、ちゃんといい話だなーと思える作りにもなっていて、なかなかの傑作に仕上がっていましたよ!
以下感想です(ネタバレあり)
ストーリのゴールは実際に建造物を完成させることではなく、見積書を完成させること。施主や提出日、そして施工まで見据えなければならない現実の仕事からすれば、当然ながらやはりユルい仕事ではあります。
そこを「ミケーネ帝国復活が迫っていて納期が切迫している!」として緊迫感を出すのはなかなか酔狂でイカしてます(まあマジンガーZを知っているとまずミケーネの前にドクターヘルがとかグレートマジンガーをとか色々考えてしまうんですが(笑))
技術的な課題が次々と襲ってくるのが物語の山場なわけですが、これを淡々と描いてしまっては映画としてあまり面白くありません。
なので、この映画はことさら大袈裟に、しかし馬鹿馬鹿しいほど本気で登場人物達がその課題にぶつかっていきます。
その過程で、現代の建築・土木技術の紹介も忘れないですし、あまり現場を知らなかった登場人物達が巨大ダムや大規模掘削現場に直に足を運び、その技術に触れて自分たちの仕事に誇りを持つようになる、というのも話のキモになっていました。
私も大規模構造物は好きですが、やはりあれは写真で見るのと現地で実際に見るのとでは受ける印象が全然違いますからね。現物を見て心を動かされるのは良く分かります。
様々な凄い技術者の方々に助力を求めていく展開がありましたが、現実の技術者の方々も、こういう馬鹿馬鹿しい企画は好きな人が多いですので、頼めば割とすんなり協力してくれるんじゃないかと思います。
さて、こういった企業活動を映像化する場合、一番正攻法なのはNHKの「プロジェクトX」のようなドキュメンタリー形式での映像化でしょう。実話を元にしているだけに見応えがありますし、私も好きです。
ですがこの映画の場合、多分印象として最も近いのは同じNHKでも「チコちゃんに叱られる」の中で描かれる「たぶんこうだったんじゃないか劇場」のノリですね。
なにせ鶴見辰吾さんを下請けの技術者役で使ってきてますからね。狙って作ってるでしょこれ! 卑怯だよこのキャスティング(苦笑)
あと細かいことですが、お話の時期が2003年ということで、オフィス内のPCモニターは全部4:3になっていたり(多分OSはWindows XP)食べてるお菓子も当時のものに合わせてたり、当然スマホはなくて全員折りたたみガラケーだったりと、細かい描写が思いのほか丁寧に作られていて感心してしまいました。小道具揃えるのも大変だったんじゃないかしら。
こういう細かいところに手を抜かないでリアリティを追求しつつ、本筋では思いっきりバカをやる、というバランス感覚に優れた映画だったと思います。しかも堅苦しい内容ではなく、気楽に見に行って大笑いして帰ってこれる良作でした。
惜しむらくはあまり一般ウケする内容ではないため、いまいちヒットはしなさそうな所でしょうかねぇ…