【映画】新海誠監督の最新作「天気の子」を見てきた。今回の新海風味は濃いめ?薄め?【感想】
天気の子(Weathering With You)
前作「君の名は。」の大ヒットですっかり有名アニメ監督の仲間入りをしてしまった新海監督の最新作が公開されましたので、早速見てきました。
「君の名は。」は新海作品としてはかなりストレートにエンターテインメント性に振った作品で、ちゃんとハッピーエンドになったこともあって多くの人に受け入れられましたよね。「ほしのこえ」の頃から追いかけている視聴者としては「監督らしさが薄れた!」と感じる部分もややありましたが(苦笑)やはり面白い作品だったことは間違いありません。
むしろ前作があまりにヒットしてしまって、次が大変だろうなぁと心配していました。同じような気持ちのファンは多かったんじゃないかなぁ。
以下感想です(ネタバレあり)
ぶっちゃけ新海作品は一定のフォーマットというかパターンが決まっていて、
- 美麗な背景美術の数々
- 男女間のすれ違いがメインテーマ
- 男性側の感傷的なモノローグの積み重ね
- 舞台装置としてのSF・ファンタジー要素
- 映像と音楽(挿入歌)で畳みかけるクライマックス
と言ったところが主な特徴でしょうか。このパターンが高いレベルでまとまったのは「秒速5センチメートル」の時だと思います。その後にちょっとだけこのパターンを変えようとしたこともありましたが、前作も今作も基本的にはこのパターンです。あとはそこにどんなキャラクターやサブテーマを乗せてくるかだろうと思います。
今回はファンタジー要素は「天気の巫女」という一点に絞って、逆にキャラクターの置かれた環境や関係の方に話の焦点を持ってきた感じでした。前作が「2人の入れ替わり」「隕石落下」「時間移動」とファンタジー要素が盛りだくさんで謎解き要素まで入っていたことからすると大分スッキリしてます。
その分キャラクターが厳しい現実の中を「生きる」描写については、生々しい要素を入れてきましたね。この辺は賛否が分かれるかも。主人公の最大の障害として立ちはだかるのが警察組織というのもかなりリアル指向です。とはいえ主人公は犯罪重ねすぎでしたね(苦笑)警察の皆さんは職務を粛々とこなしてるだけなので何も悪くないですしねぇ。
主人公達の年齢をやや低く設定していることもあって、私みたいなオッサンには感情移入がしにくい部分もあったのですが、その辺は兄貴分的立場の須賀さん等の脇役が上手くフォローしていた感じです。ヒナちゃんの弟の凪君(センパイ!)や年上のお姉さんの夏美さんなども良い感じでした。
となってくると、作品として問題になってくるのはやはり最後のまとめ方。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、新海作品の場合そこが最大のポイント!!
結果から言えば、ビターエンドでした。
主人公とヒロインが引き裂かれず再会することが出来たという点ではハッピーエンド。しかし雨が止むことがなくなり東京が水没してしまったという点ではバッドエンド・・・
要は「彼女を助けるのか」「天気を正常に戻すのか」の二者択一で、迷うことなく彼女の方を選んだという構図なわけで、そこについてはまあ良いと思うのです。
ただその結果として起きた「東京水没」というのは、ちょっと唐突すぎてしっくり来ませんでしたねぇ。「東京が水没した」というナレーションで「え?」って感じました。
長雨が続く中で「このままだと東京水没の危険もある」ことを示唆するような伏線を、中盤あたりに挟んでおいてくれたほうが親切だったんじゃないかしら。そのリスクも承知の上で彼女を助けることを選択する方が主人公の決意も強くなるし、水没する展開についても受け入れやすかったんじゃないかと思うのですが…
まあ水没自体もバッドエンドと言い切れない面はあるわけで、それが日常になってしまっている東京の風景というのもなかなか興味深いところではありました。でも家や生活基盤を失った人もたくさん居るだろうしなぁ…
この辺の微妙にモヤモヤとさせられるビターな感じは、実に新海監督らしい作りだったなぁと感じます。前作に比べエンタメ性は後退しましたが、監督の作家性はより前面に出てきていたのではないかと思います。
あと余談ですが、全く予備知識入れずに行ったので「君の名は。」のメインキャラがしっかり台詞付きで登場したのにはビックリしました。メインの二人だけでなく、てっしーや四葉も出ていたそうですが、う~む全然気付かなかった……次見るときには気を付けて見てみよう。
(それにしてもタイアップ商品の登場がやたら多い映画だったな…)