現実の完全栄養食はディストピアSFの不味そうな飯と何が違う?
完全栄養食パスタ All-in PASTA
本日(2019/03/27)日清食品から「完全栄養食」を目指した新商品「All-in PASTA」という物が発売されました。
平成29年国民健康・栄養調査において1日に必要とされているビタミン・ミネラルその他栄養素の1/3を一食でまかなえるという商品です。私も早速試してみようかと思い、日清食品さんのオンラインショップ(こちら)を見てみたのですが、既に初回分は売り切れて現在は予約を受け付けているだけの状態でした。皆さん行動が早いですねぇ。
この「All-in PASTA」は3種類の味が用意されており、栄養素特有の苦みなどが味に影響しないよう美味しく作られているそうです。「おいしいこと」は人間の食事において超重要ですからね! 私もチャンスがあれば試してみたいと思います。
現実の「完全栄養食」っぽいもの
思えば日清食品さんは「ダネイホン」・・・じゃなくて(苦笑)「ビセイクル」の時代から栄養食品に関わってきた伝統がありますね。
日清食品をモデルにしたNHK連続テレビ小説「まんぷく」でインスタントラーメンを開発する経緯でも「美味しくて、体に悪い物は入れていない」というテーマが語られていました(まあ実際には油で揚げているため良くない面も多いことは皆さん良くご存じとは思いますが)
そのインスタントラーメンの延長上にある「All-in PASTA」が、同様に「栄養食」を全面に出してくるのもうなずけるというものです。
このように手軽に栄養をとれる食品というと、まず思い浮かべるのは「カロリーメイト」ではないでしょうか。
カロリーメイトは「完全」とは言っていませんが「バランス栄養食」をうたい文句にしている商品です。ですが脂質が多すぎる割にたんぱく質と食物繊維は不足していて、残念ながら「完全」には遠い商品ですね。でも手軽さがありがたく、口にする機会は多いです。
もう一つ手軽な栄養補給食として一般的なのはこれでしょう。
定番中の定番、inゼリーです。私も以前だいぶお世話になりました。 目的とする機能ごとにビタミン・プロテインなどと用途が分かれており必要に応じて選べますので、補助食品としてはかなり優秀なんじゃないかと思います。
さて、日本では上記の商品が2強だと思いますが、海外では有名な商品があります。イギリスのソイレント社が販売している「ソイレント」です。
ただこちらの商品、食べて具合が悪くなった方が続出したため、カナダでは出荷禁止措置がとられたとか・・・うーん、駄目じゃん!
そしてソイレントと言えば・・・
ソイレントという名前を聞けば古くからのSFファンの方ならピンとくる言葉があるはずです。そう「ソイレント・グリーン」です。
1973年に作られた映画で舞台は2022年ですから、現実がもうすぐ追いつきます。人口増加で食糧難に陥った人類に配給される完全栄養食品「ソイレント・グリーン」の秘密とは・・・という内容の古典SF映画なんですが、まあ原料が人間だったというオチです(超ネタバレ!) このソイレント・グリーンが緑色の小さいビスケットのような外見で、ハッキリ言ってすごく不味そうなんですよねぇ。
これに限らず、なぜかこの手の「ディストピアSF」に登場する栄養食は不味そうな物が多いのです。
※ディストピア:行きすぎた管理社会を表す言葉で、ユートピア(理想郷)の反対の意味で使われます
フィクションの「ディストピア飯」いろいろ
SFでこの手の「栄養は満たしているけど不味そう」な食事と言えば、やはり「2001年宇宙の旅」(1968年制作)に登場した物が原点ではないかと思います。
トレイの上にカラフルなペースト状の食材が敷き詰められているのですが、この時代にこういった物を創造していたというのは凄いですね。強烈なインパクトがあったために、後にガンダムでもエヴァンゲリオンでも似たようなパクリ飯が登場しました。
宇宙食なので機能的になるのは分かるのですが、あまりにも味気ないですね。
アニメーションではTVアニメ「DTエイトロン」に登場した「データミール」という物が、アニメ史上最も不味そうな食事と言われています(諸説あり) 食べるカラーパレットという感じの物で、作中でも散々不味い不味いと言われていました(苦笑)
ただSFだと不味い食事ばかりなのかというとそういうわけでもなくて、SFの代表格「スタートレック」はむしろ食事にこだわる描写が多いです。ピカード艦長はことあるごとに「アールグレイ、ホット!」と注文して紅茶を楽しみますし、ジェインウェイ艦長は船が窮地に陥っていてエネルギー不足な状況でも「いいからコーヒーを出しなさい」と言ってコーヒーを合成させます(スタートレックの食事は分子を変換して作るのでとてもエネルギーを使うのです)
やはり人間、どんな窮地に陥っていても食事には「おいしい」が欲しいですよね~
美味しい完全栄養食
先の日清食品の商品は、美味しく作るために麺の製法をかなり工夫しているそうです。今の時代どんなに栄養豊富でも美味しくなければ売れません。
機能食品の局地と言える「宇宙食」も味にはだいぶこだわっているそうでバリエーションもかなり豊富。フリーズドライの寿司やスイーツまであるそうです。宇宙飛行士にはかなりのストレスがかかりますし環境も過酷です。そのため美味しい宇宙食の開発は宇宙開発では欠かせないテーマなのだそうです。
食事は突き詰めれば栄養さえ補給できれば良いわけですが、それだけでは精神の補給までは出来ませんからね。美味しい食事を取ることは人間には絶対必要なことだと思います。ストレスの多い現代社会では、ますます重要になってくることでしょうね。
フィクションに登場するようなまずいディストピア飯は、少なくとも現代では到底受け入れられる物ではないのです。